Professional Episode

Episode
02

国際希少種コツメカワウソの
密輸組織を追え。

  • コツメカワウソ
  • 警視庁生きもの係
  • 小さな命を守れ。

愛らしい仕草やまなざしで人々を魅了する、コツメカワウソ。主に東南アジアに生息しているが、その人気に目を付けた密輸グループの活動が近年顕著となり、近年、日本人女子大学生がコツメカワウソの密輸容疑で逮捕される事件も発生している。生活環境課環境第三係、通称「生きもの係」と、関係警察署生活安全課の捜査員たちは、暗躍する犯人グループの動向をひそかに追っていた。

PROJECT MEMBER

生活環境課
環境第三係
2004年入庁 神奈川県出身

生活環境課
環境第一係
2008年入庁 東京都出身

万世橋警察署
生活安全課 保安係
2003年入庁 千葉県出身

01

密売人を確保せよ。

平成30年6月、都内にある小動物と触れ合えるカフェの周辺で、生きもの係のベテラン捜査員たちは、ある男が訪れる瞬問をじっと待っていた。事件の発端は、コツメカワウソの売買を持ち掛けてきた男の言動を不審に思ったカフェの店長からの通報だった。現在、コツメカワウソは国際希少種に指定されており、商業目的の輸入は国際条約で厳しく制限されている。捜査員たちは違法な取引の可能性が高いと見て、男が店に訪れたところを確保するために張り込んでいた。

カフェがオープンしてしばらくした頃、男が訪れ、店長にコツメカワウソの取引交渉を始めた。交渉の場には、会話の一部始終を確認するため、捜査員が店のスタッフになりすまし、同席していた。やがて、会話の内容から売買目的の密輪の疑いがあると判断した捜査員は、すかさず合図を送り、張り込んでいた捜査員たちを突入させた。「カワウソを密売しようとしたな!」密売人の男を確保し、捜査本部を構える万世橋警察署へ任意同行した。

02

金儲けのために
命を軽んじる行為は許さない。

捜査員はコツメカワウソを密売しようとした男を動物愛護法違反の容疑者として取り調べた。男は日本国内で取引先を探す担当だと供述した。また、運搬に使用したキャリーバッグが証拠となり、タイからの密輸であることや、運び屋などの関係者が複数いることも分かった。捜査本部は、この男が単独で起こした事件ではなく、背景には組織化された犯行グループが存在する可能性が高いと判断し、捜査を更に進めた。そして、ついに売買しようとした男と運び屋の男を、外国為替及び外国貿易法違反容疑で逮捕した。カフェに持ち込まれた2匹のコツメカワウソは衰弱していたが、捜査員たちの献身的な世話により順調に回復した。一方、その事件の捜査中、東京国際空港で、東京税関が捜査本部からの情報を基に、密諭されたコツメカワウソ5匹を発見する事件も発生した。このうちの2匹は既に死んでおり、その後衰弱していた別の2匹も、命を落としてしまった。違法な利益を得るために命を軽んじる行為を目の当たりにした捜査員たちは「絶対に許せない」という思いを強く抱いた。

03

国内外で暗躍する
密輸組織を叩く。

タイから密輸されるコツメカワウソは小さな赤ちゃんであることが多い。親カワウソから強引に引き離し、捕獲後に睡眠薬で無理やり眠らせ、飛行機の荷物に紛れ込ませて運搬する。卑劣なやり口に捜査員たちは「絶対に犯人グループを検挙する」という思いを強く抱いた。しかし、現場で検挙できる犯人は売り子役や運び屋役で、犯罪組織にとっては末端の「トカゲのしっぽ」に過ぎないことが多い。捜査員たちは密輸事件を元から断つために、日本全国に捜査網を広げていった。
羽田や成田といった東京の玄関口をはじめ、全国の空港では税関職員が検査を行っている。そこで、税関と協力体制を敷き、犯行グループの中心的存在としてマークしていた人物を航空機に搭乗するタイミングで確保した。これにより組織的な密輸の実態が徐々に解明されていくこととなった。また、別の捜査員は、カワウソ研究の専門家が在籍する九州の大学へ足を運び、コツメカワウソの種の特定やDNA鑑定を依頼するなど、裁判を見据えた証拠固めに向けて全国を駆け巡っていた。

04

事件解明が
条約・法改正の後押しに。

密輸に関わった犯人たちを次々と検挙する中、被疑者の1人は逃亡を図っていたため、捜査員たちの追跡調査は続いていた。逃走を続け所在不明となった被疑者を指名手配し、7か月に及ぶ執念の捜査の末、ついに検挙することができた。その後、逮捕した犯人たちには実刑判決が下った。

この一連の密輸事件は、ニュースで報道されるなどの社会的反響が大きく、環境保全に関わる国際会議で取り上げられ、コツメカワウソはワシントン条約で規制された野生動植物の中で最も規制が厳しい動物への格上げが決定するなど、世界に警視庁の活躍が伝えられた。

警視庁では、希少動植物の不正取引をはじめ、自然環境や生態系を脅かす犯罪の取締りも重要な任務となる。事件が発生すれば、事案ごとに動植物の専門知識を修得し、関連する法令を調べる必要があり、捜査には粘り強さが必要で苦労も絶えない。それでも、捜査員たちはかけがえのない命を救うため、捜査のプロフェッショナルとしての誇りを持ち、日々奮闘を続けている。